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【特集】KDDIのLTEネットワークは大丈夫なのか?【3】障害は頻発したが、LTE通信品質が高いKDDI
( 2013-06-12 23:00:00 )

【特集】KDDIのLTEネットワークは大丈夫なのか?【2】LTE通信障害の原因と対策に関する記者会見(後編)

本特集では、2013年6月10日にKDDI開催した「一連のLTE通信障害の原因と対策について」の記者会見を解説してきたが、ネット上や一部の報道では、『大規模な障害が発生しているから、KDDIのLTEサービスはダメだ』『インフラがガラパゴス化しておりグローバルから取り残されている』という意見も出ているが、AppComingで実施してきたフィールドテスト結果や得ている情報から判断すると、真逆な意見となる『KDDIのLTEサービスの通信品質が高い』と考えている。

いくつかの理由が挙げられるが、主に以下の2点だ。

  • 800MHz・10MHz幅を中心に、2.1GHz・5MHz幅および一部の1.5GHzなどによるマルチバンドかつ合計15MHz幅以上のLTEバンドを活用しており、短期的にはユーザ数に対する十分な帯域を保有している
     
  • モバイルネットワーク設計・構築において、技術志向であり、高速・低遅延・パケットロスが少なく・揺らぎ(Jitter)が少ない、クオリティの高いLTEネットワークを都心エリアで運用している
     

前者については、主たる帯域の実人口カバー率を公表したことで、保有帯域だけではなく、エリア整備も含めて、NTTドコモに準ずるLTEネットワークを提供しているおり、あるいは、NTTドコモが2.1GHz・5MHz幅のみで提供しているエリアで、KDDIが800MHz・10MHz幅を提供しているエリアでは、確実に業界トップの快適さを提供していることになる。

後者は、フィールドテスト結果によって得られたものであり、全国・全エリアでの調査を行った上での評価ではないが、最もトラフィックが多い都心エリアでのハードなエリアで高品質であることは、KDDIのLTEネットワークの良さ・強さを示していると考えている。
 

また、LTEインフラのガラパゴス化と言われると、違和感を感じるのは、世界で最もトラフィック量が多い都心エリアでの設計・構築・運用を行なっている国内の通信事業者各社は、世界で最もノウハウを蓄積していると思われ、関与しているグローバルな通信機器ベンダーは、そのノウハウを得て世界にフィードバックできるという関係にあると想定している。

高機能な携帯電話(フィーチャーフォン)がガラパゴス化したケータイ、いわゆるガラケーと言われ出してから、数年は経過していると思うが、スマートフォン以前にスマートな機能を実装し使いこなしてきた日本の携帯電話や市場、そしてそれを支えて来た3G網の設計・構築・運用ノウハウや研究開発など、先進的な日本という背景があり、それらを模倣・リファレンスしているグローバルという見方の方が、妥当ではないかと考えている。
 

前置きが長くなったが、KDDIのLTEネットワークの良さを理解して頂くためのフィールドテスト結果について紹介する。


さて、ここまでは、KDDIの一連のLTE通信障害の記者会見について解説をし、苦言も呈してきたが、現時点のKDDIのLTEネットワークが、業界シェアNo.1のドコモよりも、独自の指標で接続率No.1を謳うソフトバンクよりも、品質が高いといえる結果を都心エリアでのフィールドテストで得ている。
 

都心エリアで最も高速なLTEネットワーク

まず、ゴールデンウィークに都心エリアで実施したフィールドテスト結果についての記事http://app-coming.jp/451.html の通りとなるが、一部を抜粋して再度説明する。 

スループット
(下り・上り速度)
ドコモ au B1 au B11/B18 SoftBank EMOBILE
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
ベスト 40.46 8.96 17.74 7.07 33.85 15.11 31.87 9.38 25.1 10.19
平均 11.72 3.11 5.37 5.02 14.58 9.42 7.8 6.05 5.05 5.27
ワースト 0 0 0 0 0.17 0.36 0.68 1.96 0 0
下り10Mbps超/上り6Mbps超 51% 7% 12% 39% 73% 83% 23% 55% 9% 38%
下り5-10Mbps/上り5-6Mbps 32% 11% 38% 27% 23% 5% 48% 23% 28% 26%
下り5Mbps未満/上り5Mbps未満 18% 83% 12% 34% 4% 12% 30% 22% 63% 37%
LTE率 99% 100% 98% 100% 97%

  

XenSurvey au 4G LTE B11・B18スピードテスト結果
au 4G LTE(Android用B11・B18)
 

800MHz帯では、下り最速33.85Mbps・平均14.58Mbpsと、エリア最速LTEを実現している点が最大の良さであり強みだ。(ドコモXiは、下り最速40.46Mbpsを記録しているが、平均では11.72Mbpsと、2.1GHz帯の10MHz幅化が未了のエリアで平均値を若干下げていると推察される。)

800MHz帯では10MHz幅・下り最大75MbpsでLTEサービスを提供しており、サービス開始から8か月程度とドコモに比べるとユーザ数がかなり少ない事と併せて、十分な余裕がある。 

ドコモの1.5GHz帯・15MHz幅は、トラフィックが逼迫している東名阪においては、デジタルMCA無線利用が終了した後の来年4月1日以降でないと利用ができないため、FOMAからXiへの乗り換えを促進させることで、FOMAで使用している帯域の5MHz分をXiに振り替えて、2.1GHz帯を5MHz幅から10MHz幅にシフトして急速に逼迫したトラフィックを改善している現状がある。

LTEユーザ数が圧倒的に多いドコモでさえ、10MHz幅になったエリアにおいては、かなり高速かつ快適に通信ができる状況と比較しても、KDDIの800MHz・10MHz幅をLTEのコアとしている点で当面は優位な状況が続くはずだ。 

但し、KDDIには、iPhone5および夏モデルAndroidスマホが使用可能な2.1GHz帯(下り最速17.74Mbps・平均5.37Mbps)もあるが、5MHz幅・実人口カバー率71%という現状(但し、今年度末には80%となる見通し)や、KDDIの公表した同バンドへの考えからすると、今後は800MHz帯のサブバンドとしての位置づけに留まるだろう。

ソフトバンクの2.1GHz帯(下り最速31.87Mbps・平均7.8Mbps)、イー・モバイルの1.8GHz帯(下り最速25.1Mbps・平均5.05Mbps)は、何れも5MHz幅を主たる帯域幅としており、加入者が増加すると、先行したドコモの5MHz幅のエリアと同様に逼迫した状況になるであろうことから、KDDIの800MHzが優位に推移することが推察される。

ソフトバンクのイー・モバイルのエリアをプラスするダブルLTEも、自社網のオフロード対策には有効だが、現時点では別々なネットワークでしかなく、連続した10MHz幅を1社で運用することの比にはならないだろう。
  

低遅延で揺らぎ(Jitter)の少ない高品質なネットワーク 

続いて、LTEネットワークのクオリティについて検証する。

Latency
XenSurvey テスト結果Webサイト「Quality」メニューのLatency
「View」プルダウンメニューから任意のネットワークの結果を単一表示できる。 

Latency(遅延・ping応答)について、平均以上の値の範囲となる比率は、ドコモXi93%と最も良く、以下、KDDIの2.1GHzが90%、EMOBILEが83%、KDDIの800MHz・1.5GHzが76%となるが、『接続率No.1』を謳うソフトバンクは、僅か0%と非常に遅いな結果となっている。

ソフトバンクのLatencyは、メジャーな計測ツールのSpeedtest.netやRBB Today Speedtestでは、他の追随を全く許さぬ高速応答を示すことが多いが、XenSurveyではその真逆の結果が出ており、不可思議な状態といえるが、何れにしてもKDDIはドコモと比しても同等レベルの低遅延なネットワークを2.1GHz帯で実現している。 

XenSurvey Quality PacketLoss
XenSurvey テスト結果Webサイト「Quality」メニューのPacketLoss
「View」プルダウンメニューから任意のネットワークの結果を単一表示できる。 

パケットロスについては、ソフトバンクのみがロス無しという結果で、『接続率No.1』を謳うだけの基地局増強を実施したことが確認できたが、その他すべて、1~2%のロスがあったのみで、車での高速移動で1分間隔の計測を行なっているが、都心エリアのLTEは、各社問題のない状況といえる。

XenSurvey Quality Jitter
XenSurvey テスト結果Webサイト「Quality」メニューのPacketLoss
「View」プルダウンメニューから任意のネットワークの結果を単一表示できる。
 

Jitter(揺らぎ)について、平均以上の値の範囲となる比率は、KDDIの2.1GHz帯が最も良好で、10ms以下が40%・19ms以下が47%と合計で87%という結果で非常に安定している。以下、ドコモXiが83%、KDDIの800MHz・1.5GHzが71%、EMOBILEが64%となるが、またしても『接続率No.1』を謳うソフトバンクは、僅か37%と非常に不安定で、接続率No.1の次は、通信品質No.1を目指して欲しい結果となった。
 

各社のグラフは以下の通りだ。(円グラフの赤い面積が多いほど質が低い。)
※縦・横のスケールを合わせる為に画像のアスペクト比はオリジナルのスクリーンショットから変更している。
※見やすくする為に、平均値を大きく超える50ms超の結果は、グラフをカットしている。

XenSurvey Quality Jitter
KDDI 2.1GHz

XenSurvey Quality Jitter
KDDI 800MHz

XenSurvey Quality Jitter
docomo LTE Xi

XenSurvey Quality Jitter
EMOBILE LTE

XenSurvey Quality Jitter
SoftBank 4G LTE

通信・電波のクオリティは、KDDIの2.1GHzとドコモXiが双璧で非常に良い結果であったことが確認できた。

KDDIのコアバンドとなる800MHz帯は、カバー率が99%と高いもののややクオリティが低いという結果となっており気になるが、バンド特性やカバー率を優先した整備だった事も考えられるため、今後の2.1GHz帯と同様なクオリティの高さへの改善が期待される。
 

上記のフィールドテスト結果の詳細は、XenSurvey テスト結果Webサイト http://bit.ly/XenSurvey-20130504.html より確認できるので、興味のある方は参照頂きたい。
※開発元Xencode社による外部サイトの為、アクセス状況掌握の為にbit.lyを使用する

 

また、KDDI夏モデルHTL22 HTC J Oneでのフィールドテストも実施した。
複数端末でのテストを実施したが、下り・上り速度結果グラフと、結果サマリがまとまった表のみを掲載する。 その他の詳しい結果は、XenSurvey テスト結果Webサイト http://bit.ly/HTCJONE より確認できるので参照頂きたい。

HTL22 HTC J One
下り速度

HTL22 HTC J One
上り速度

HTL22 HTC J One
結果サマリ

こちらは、港区高輪・芝浦エリアを歩行しながら計測した結果で、上記のクルマでの都内一周と比較すると、低速移動でのハンドオーバーという面でも有利で、かつトライバンド対応機種HTL22での計測ということで、より端末側から見た通信の質としては良い結果が得られていることを確認できる。 

※HTL22は、LTEに固定して3Gにダウンしない状態での計測結果であり、LTE/3G自動切り替えの通常利用においては、ここまでの通信品質が得られない可能性があるので、その点を注意して欲しい。
また、Signal Strength(信号強度)をアプリ側が取得できない機種のため、-120dBmとなっているが、実際には最も良い状態であった。
※SCL21 GALAXY S3 progreは、LTEをオフにした状態で計測しており、非LTE端末での同エリアでの状況をエミュレートした。
※ドコモはXiは、一部品川寄りの1.5GHzも吹いているエリア近くを通過しているが、ほぼ2.1GHz帯・10MHz幅での結果となる。
 

 


以上、2回のフィールドテスト結果を踏まえて、最もトラフィック量が多い都心エリアにおいて、KDDIのLTEネットワークは国内トップレベルに構築されている事が確認できた。

もちろん、マルチバンドを前提としているため、春モデル以前の2.1GHzのみのiPhone5やAndroidスマホでは、十分にその良さを享受できないことにはなるが、この夏モデル以降の機種であれば、最高レベルのLTEネットワークを利用できると言える。

2.1GHzのエリア誇大広告問題と、一連の障害で評価を下げているKDDIだが、8月末までのインフラ増強・改修を終え、LTEサービス開始から1年を迎える9月には、国内最強LTEと自負できるような、ドコモのStrong.に負けないLTEネットワークに仕上がる事に期待したい。
 


  • 【特集】KDDIのLTEネットワークは大丈夫なのか?

【1】LTE通信障害の原因と対策に関する記者会見(後編)
 http://app-coming.jp/485.html

【2】LTE通信障害の原因と対策に関する記者会見(後編)
 http://app-coming.jp/486.html
 

【3】障害は頻発したが、LTE通信品質が高いKDDI
 http://app-coming.jp/487.html
 

  • 【特集】KDDIの大規模な年末年始の障害における根本原因と対策

前編   http://app-coming.jp/367.html
 
後編1 http://app-coming.jp/368.html
 

後編2 http://app-coming.jp/369.html

 

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